ヨコハマトリエンナーレ2017-2<横浜赤レンガ倉庫1号館>
横浜美術館の次は、赤レンガ倉庫へ向かいました。会場間バスはかなり満員で、座るどころか結構ぎゅうぎゅう。10分ほどで到着です。赤レンガ倉庫をゆっくり訪れるのは久しぶりでした。
▲この上ない快晴で、空と海の青が眩しい。
場所の力
数年ぶりに建物の中に入ってみて、やはり赤レンガ倉庫は素敵な場所だなと思いました。青い海のそばに赤い建物があるというだけで見栄えがするし、建物そのものが展示物のよう。赤レンガ倉庫に展示されているというそれだけで、良いもののように感じてしまうなぁ、と思いながら作品を見ていました。
廊下にぽつりぽつりと展示されていて、心に残るなぁ…と感じたのは、横浜美術館に続いてここでも瀬尾夏美さんのものでした。とても短いのに、心に残る素敵な作品。
▲「遠い日|山の終戦」瀬尾夏美
こちらは一番最初に見た作品。部屋の両側には絵画、中央のスクリーンには映像が。その場に座って見られるようになっていたので、しばしぼうっと鑑賞しました。映像が始まると暗くなるので、長く休憩していく人も。
▲「帰って来た」小沢剛
家電と楽器を組み合わせた自動演奏装置が暗がりに浮かび上がっていました。
▲「プライウッド新地」宇治野宗輝
描き込みがものすごい。中央の明るくなっているところは映像です。生まれつき視力が弱かった作者は、「見える」「見えない」というテーマで作品をつくり続けているのだそう。
▲「ミエテルノゾム君の夢製造伝奇 」照沼敦朗
赤レンガ倉庫創建当時の瓦に銀細工を施した作品。窓の外には海が見えました。
▲「yt / thirty six」プラバワティ・メッパイル
机の上にずらりと並べられたのは、100冊ものヨーロッパのロードマップ。都市以外の部分が黒く塗りつぶされていて、人が暮らしているところだけが白く浮かび上がっています。無意識に点と点を結びつけてしまって、星座のようでした。神様が見た人間の様子。
▲「アトラス」キャシー・プレンダーガスト
じわじわくる作品たち
一番面白かったのが、クリスチャン・ヤンコフスキーさんの作品。「重量級の歴史」は、ポーランドの重量挙げ代表チームが、歴史的人物の彫像を持ち上げようとする様子を写真と映像で紹介したものです。なんでそんなことをしようと思ったのでしょうか…発想がすごい。馬鹿馬鹿しいことを大真面目にしている様子に惹きつけられてしまいます。
映像はスポーツ中継のようになっていて、真剣な選手たち、応援するサポーター、熱くなるアナウンサーの様子から目が離せません。どうしても持ち上げられないこともあって、アナウンサーから「失敗の原因は?」と問われる場面も。
▲海外の方も食い入るように見ていました。
「アーティスティック・ジムナスティック」は、体育大学の学生が公共彫刻を使って身体訓練をしている様子。真剣に考えられたワークアウトと、学生の真面目な顔、見れば見るほど面白いです。
▲作品解説のところに、ちゃんとワークアウトの内容が書かれています。
ドン・ユアンさんの「おばあちゃんの家」には圧倒されました。タイトル通り、祖母の家をモチーフにしたものです。子どもの頃からよく遊びに行っていたのに、区画整理のために解体されてしまうおばあちゃんの家。
写真かな、と思うのですが、絵なんです。しかも、窓、カーテン、料理一皿とすべて別々に描かれていて、それを組み合わせて部屋を再現している。
棚の上に並ぶ雑貨まですべて事細かく再現されていて、ものすごい緻密さ。中国のお宅ではありますが、実家ってこんな感じだよね…という懐かしさを感じたのが不思議でした。「実家の雰囲気」は万国共通なのでしょうか。何が共通しているんだろう。
最後に見たのは、Chim↑Pomが発案した「Don't Follow the Wind」というプロジェクトの、「ウォーク・イン・フクシマ」という映像。帰宅困難区域内の映像で、ヘッドマウントディスプレイを被ることで360度映像の中を見渡すことができます。
▲ヘッドセットは、福島県に住むある家族が制作したものだそうです。
写真はないけれど印象に残ったのが、ラグナル・キャルタンソンの「ザ・ビジターズ」。大きな家のあちこちで、ミュージシャンがそれぞれの楽器を演奏しています。ヘッドフォンからは互いの演奏音が聞こえ、それを頼りにひとつの曲を全員で奏でようとしている様子が定点カメラで撮影されています。そして鑑賞者は、暗室に並べられたたくさんのモニターを前に、そのハーモニーを聴くことができます。とても面白い仕掛けだと思いました。
さて、夕暮れが近づいてきました。続いて、BankArtへ向かいます!